主演:林由美香 佐藤幹雄 久保田あづみ
导演:濑濑敬久 Takahisa Zeze
简介:ヒロイン(工藤翔子)は、旅行代理店に勤めるOLである。昼間は真面目に仕事をしているが、夜はテレクラで男を漁り、また、会社の上司(伊藤猛)との不倫関係も続けていた。彼女の職場にやってくる清掃会社の若い男(川瀬陽太)は、密かに彼女に好意を寄せており、その行動をストーカーまがいに追いかけている。たびたびすれ違った二人は、彼女がテレクラで知り合った男(小林節彦)に脅迫されたことをきっかけとして心を通わせ、ようやく結ばれるが、その時、主人公は彼が自分をつけまわしていた男だということを知ってしまう。
この映画、「結末から物語が始まる」。真夏、ベッドの上に横たわって動かない女の裸身、その上を這っている小さな蝉。何故彼女がそのような姿で横たわることになったのか、が、その後、順を追って、時には遡り交錯しながら語られてゆく。油断しているとどこがどうなのか一瞬、わからなくなる(私は2度見て確認した。笑)。
そんな具合で現在と過去が交錯しながら、最後に、冒頭で描かれた結末が繰り返される。ただしこれで物語が終わったかのように見えて、もう一度、同じ物語が(今度は違う展開かもしれないし、全く同じかもしれない)始まるところで映画は幕を閉じる。そういえばこれは「アナーキー??イン??じゃぱんすけ」に似た円環形式だなぁ。同じ物語の中で彷徨い続ける男女というファンタジーの領域にまで達しながら、見終わった後に心に残るのは、蝉にたとえられた、曖昧な焦燥感に駆られて自暴自棄になってゆく登場人物たちの不器用さなのだった。
もともと瀬々作品って説明が多いほうではないけど、この作品も極端にセリフが削られ、同時に、場と場、行動と行動をつなぐ「何故?」という理由であり動機の部分が全く描かれていない。映画の全編に漂う生々しさであり刹那的な雰囲気であり寂しさのようなものは、登場人物たちの、理由のない(あるだろうけれども描かれない)衝動的な行動の連続から感じさせられるものなのかもしれない(私はこういう作風はとても好きだ。瀬々監督の、というよりも、脚本の井土紀州の持ち味かもしれないけど)。のちに登場する「雷魚」と何となく似ている。蝉という生き物で人間の有様を印象づけているところも、そういえば似てるんだよな。